住宅改修

高齢者にとって、玄関周りは転倒やつまずきの危険がいっぱい!

第1回「玄関周り」の問題点

シニア・高齢者が安心・安全に暮らすために大切なのは、自分の生活を住まいに合わせるのではなく、自分の生活に住まいを合わせることです。ただし身体の機能が低下してくる高齢者にとって、家の中にはさまざまな危険が潜んでいます。
具体的にどんな場所に、どんな危険があるのか、まずは「玄関周り」から見直していきましょう。
安心・安全な住環境を研究している日本福祉大学 健康科学部福祉工学科 村井研究室が、問題点、課題、そして、解決策を一緒に考えます。

日本独特の自然環境、行為から生じる、玄関やアプローチ部の段差。

玄関は、住宅の出入口であると同時に、我が家の顔でもあります。道路から敷地に入り、アプローチを通って玄関までの空間は、単なる通路ではなく、道路と我が家を繋ぐ大切な空間なのです。そして、玄関扉から建物に入ると、「靴を脱ぐ」という日本独特の行為があります。アプローチから玄関の流れ。それは空間的にも心理的にも、日本人には重要な部分といえますね。

一方、建物内から見ると、「最初の屋外空間」となるのが玄関アプローチや庭。シニア・高齢者や障害のある方にとって、外出はハードルの高い行為になることも多く、「最初の屋外空間」が安全で使いやすいことは、屋外に出たいという気持ちを持ちやすくします。しかし、バリアフリーの視点で玄関周りを見ると、とても多様な問題と課題が存在しています。

玄関周り全体の見直しポイント

日本は雨が多い国です。そのため、住宅の床は地面より高くする必要があり、この高低差を、道路から玄関の上がり框までの間で、解消しなければなりません。
すなわち、日本の住宅はどうしても段差が生まれるもの。それを「どこで」「どのように」解消するかなんですね。その際には、どのような身体状況の人が、どのように使用するかについても、合わせて考えることが必要です。

玄関アプローチの見直しポイント

アプローチ

アプローチから玄関までは屋外ですから、天候や時間帯による影響などを受けます。雨天ならば滑りやすいし、傘と荷物を両手に持っているときは、とっさの対応が難しくなります。
また、冬は雪が積もれば凍結の心配があり、夜間では足元が見えにくく、段差や障害物などにつまずきやすい。
さらに、路面仕上げによっては滑りやすさも変わります。つまりは、自然環境の影響を受けやすいことに要注意です。

玄関ポーチの見直しポイント

玄関ポーチ

通常、玄関ポーチはアプローチより高くなっています。そのため踏み外しての転倒・転落が心配になります。
車椅子を使用する際は、ある程度の広さがないと、脱輪や車輪の転がりによる転落に繋がる危険もあります。
また、玄関の扉が開き戸の場合、扉はポーチ側に開くため、この分のスペースが必要になります。
扉を引くときは身体を扉から避けて、そして、押すときは身体を前に移動させて開閉しますね。
このときにバランスを崩すことが多いんです。特に車椅子使用では、なかなか難しい。
また、片麻痺の場合は、麻痺のない側の手で扉を開け、同じ側の足で身体を支えることになります。
杖を使用している場合は、杖を持ったままか、杖を持ち替えて扉を開けますが、このときにもバランスを崩しやすいんです。

土間空間・上がり框の見直しポイント

土間空間・上がり框

土間は比較的狭い家が多く、そこで上がり框という大きな段差を、靴を脱ぎ履きしながら上り下りしなければなりません。
これらの動作が危ない。身体のバランスを崩して、転倒することもあります。
車椅子を使用する場合は、土間に車椅子が入るのか、また、玄関で屋内用と屋外用の車椅子を乗り換えるのか、一つの車椅子を屋内と屋外の両方で使用するのかによって、必要なスペースが変わってきます。

 


 
今回の記事では、玄関周りの問題と課題をご紹介しました。
次回は、その解決策について、ご一緒に考えていきます。

■参考文献
・東京商工会議所編:福祉住環境コーディネーター検定試験2級公式テキスト改訂5版,2019.1

 

この記事の執筆者

村井 裕樹
日本福祉大学 健康科学部 福祉工学科 建築バリアフリー専修 准教授

●略歴
1995/03.日本大学 理工学部 卒業 学士(工学)
1999/03.日本大学大学院 理工学研究科博士前期課程 修了 修士(工学)
2002/03.日本大学大学院 理工学研究科博士後期課程 修了 博士(工学)

●主な研究テーマ
・高齢者や障害者の建築環境に関する研究
・福祉施設や病院における火災時の避難安全に関する研究

 
 
 

My エデンの園〈創造〉計画プロジェクトとは
いつまでも安心・安全に、自分の家で暮らすために。

いつまでも安全に安心して、慣れ親しんだ自分の家で暮らしたい。
それは、多くの方が望むことです。ただ、残念ながら、毎年30,000人以上の高齢者が「不慮の事故」で亡くなっています。厚生労働省「人口動態調査」調査票情報によると、「自然災害」、「交通事故」を除いた「不慮の事故」の死亡者数も増加傾向にあり、特に「誤嚥等の不慮の窒息」、「転倒・転落」、「不慮の溺死及び溺水」については「交通事故」より死亡者数が多いことが報告されています。
これは、高齢になるにつれて心身機能が低下することが大きく影響しています。「少し足が上がりづらくなった」、「ふとしたことで態勢を崩してしまう」ということが増えてきます。これまで何の不安も危険も感じることなく過ごしていた家のあちこちが、高齢者にとっては転倒や転落のリスクをはらんだ危険な場所へと変わってしまうのです。そして、そのリスクを回避するために、自分なりの対応方法を見つけていくのですが、それは自分の体・行動をその家に潜むリスクに慣れさせてしまっているだけで、根本的な問題解決にはなっていないのです。

今回、私たちは、そのような家の中にあるリスクについて、日本福祉大学健康科学部福祉工学科建築バリアフリー専修の村井准教授、そして研究室に所属する学生のみなさんとともに、改めて調べてみました。建築バリアフリー専修は、「福祉社会に求められる役割を果たすため、福祉や環境の目で考える建築の専門家に」をテーマにしています。
今回は、安心して、いつまでも暮らせる「理想の家」をコンセプトに「My エデンの園〈創造〉計画プロジェクト」と題して、シリーズで家の中で気を付けないといけないこと、そしてその解決方法をご提案して参ります。

尚、住宅改修や福祉用具については、介護保険を利用したサービス、各行政で行っている独自のサービスもあります。詳しくご相談したい方は当社窓口または、地域包括支援センターやケアマネージャーの方にご相談ください。

 

画像提供:PIXTA

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