住宅改修

毎日使う移動空間である廊下・階段は、高齢者・シニア世代にとって多くの危険が潜んでます。

第2回「廊下・階段」の問題点

新型コロナウイルス感染症も第3波、第4波が押し寄せ、なかなか終息の目処が立ちません。
高齢者・シニア世代の皆さんが、ご自宅で過ごす時間も長くなっています。
そこで安全・安心に過ごすために必要なことはなんでしょう。
今回は「廊下・階段」に潜む課題、高齢者・シニア世代にとってはこんなリスクがありますよという点についてお話しいたします。

高齢者・シニア、歩行に困難のある方には危険がいっぱいの空間です。

廊下・階段は移動空間です。朝起きて寝室からリビングへ、またトイレやお風呂へという移動時など、1日に何度も利用する空間です。一方、身体機能の低下した高齢者・シニアや障がいなどにより歩行に困難な方にとっては、転倒・転落が発生しやすい場所でもあります。
廊下、階段のいずれも住宅の中で比較的暗い場所にあるため足元が見えにくいことや、照明があっても自身の影が落ちてしまうという問題があります。
また階段は構造的に足を引っかけやすい作りのものがあったり、廊下と部屋の小さな段差が転倒の原因になったりと多くの問題点が潜んでいます。
課題が多い分、多様な方策を取ることにより、安全確保に努める必要があります。

寸法の見直しポイント

日本の一般的な木造住宅の寸法を考えるうえでは、「尺貫法を基本としていること」「設計図は壁や柱の“中心から中心”で寸法をとること」を知っておく必要があります。
日本の一般的な木造住宅は3尺の寸法を基準とし、その倍数で基本的に設計されています。しかし現代では尺をそのまま使うわけにはいかないので、これをメートル法に置き換えています。設計図をみると「910」「1820」と寸法が書かれていることが多いのですが(単位はいずれもmm ※ )、それぞれ「3尺」「6尺」からきている数値です。もちろん全てがこの2つの寸法で納まるわけではありませんので、455mm(1尺5寸)もよく使われる数値のひとつです。このように尺貫法を基本としているため、廊下や階段の幅は「910mm」で設計されることが多いのです。しかしこれは「人や物が通ることができる幅」(これを有効幅員という)が910mmあるわけでなく、設計図は壁や柱の中心同士で寸法をとるので、柱の太さや壁の厚さなどを引き算した残りが有効幅員になります。以上の寸法的な理由から、日本の一般的な木造住宅で大きな課題となるのが車椅子の使用です。車椅子は製品によってサイズが異なりますが、壁の中心から中心が910mm(芯-芯910ということ)の場合、廊下を直角に曲がることや廊下に面する扉を通ることが困難になりやすいのです。
階段も同様に芯-芯910で設計されることが多いので有効幅員は廊下と同様になりますが、階段には手すりも設置され、人や物が通行できる幅はさらに狭くなりやすいという問題があります(もちろん廊下も手すりを設置すれば有効幅員は同様に狭くなります)。
(※)設計図では、特に断りの無い限り寸法の単位はmmで記載されています。

段差の見直しポイント

廊下で問題となる段差は、①和室に入る場所にある敷居の段差、②ドア下枠の段差(沓摺/くつすり)が代表的です。特に、和室は畳を設置するため廊下よりも少し高くなり、段差が生じやすくなります。大きな段差は目立つため注意しやすいのですが、敷居の段差や沓摺のような小さな段差は躓きやすく転倒の危険性が高まります。
また、車椅子で通行する場合も段差の乗り越えは通行時の障害となります。その他の場所では、廊下と洗面所の間などにも比較的大きめの段差が生じている場合もあります。
階段はつくりによって安全性が大きく異なってきます。たとえば階段の「蹴込み板」(階段を上がるときにつま先が突き当たる場所にある板)が無い階段は、足先が入り込むこともあり安全上課題となります。また、階段は複数の踏板(足が乗る部分の板)で構成されていますが、基本的にすべての板は同じ素材・デザインなので、階段を降りる際は「段の境」の判断がつきにくく、踏み外してしまうこともあります。

明るさの見直しポイント

廊下や階段は住宅の中でも比較的暗い場所です。外壁に面していれば窓を設けることができ屋外からの採光もとれますが、そうでない場合は昼間でも比較的薄暗い場所になります。また、廊下はトイレや洗面所を始めなど住宅内のあらゆる移動で日常的に使用する頻度の高い場所です。また、廊下や階段に設置する照明は住宅の中ではやや暗いこと、また使用時のみ点灯することが多く、点灯する前に歩き出して躓いたりしがちです。さらに、照明は天井に設置されることが多いため、足元は自身の影で見えづらくなります。そのため、これらの状況を改善し、特に足元をしっかりと確認できるような照明計画が重要です。

 


■参考文献
・東京商工会議所編:福祉住環境コーディネーター検定試験2級公式テキスト改訂5版,2019.1


 

この記事の執筆者

村井 裕樹
日本福祉大学 健康科学部 福祉工学科 建築バリアフリー専修 准教授

●略歴
1995/03.日本大学 理工学部 卒業 学士(工学)
1999/03.日本大学大学院 理工学研究科博士前期課程 修了 修士(工学)
2002/03.日本大学大学院 理工学研究科博士後期課程 修了 博士(工学)

●主な研究テーマ
・高齢者や障害者の建築環境に関する研究
・福祉施設や病院における火災時の避難安全に関する研究

 
 
 

My エデンの園〈創造〉計画プロジェクトとは
いつまでも安心・安全に、自分の家で暮らすために。

いつまでも安全に安心して、慣れ親しんだ自分の家で暮らしたい。
それは、多くの方が望むことです。ただ、残念ながら、毎年30,000人以上の高齢者が「不慮の事故」で亡くなっています。厚生労働省「人口動態調査」調査票情報によると、「自然災害」、「交通事故」を除いた「不慮の事故」の死亡者数も増加傾向にあり、特に「誤嚥等の不慮の窒息」、「転倒・転落」、「不慮の溺死及び溺水」については「交通事故」より死亡者数が多いことが報告されています。
これは、高齢になるにつれて心身機能が低下することが大きく影響しています。「少し足が上がりづらくなった」、「ふとしたことで態勢を崩してしまう」ということが増えてきます。これまで何の不安も危険も感じることなく過ごしていた家のあちこちが、高齢者にとっては転倒や転落のリスクをはらんだ危険な場所へと変わってしまうのです。そして、そのリスクを回避するために、自分なりの対応方法を見つけていくのですが、それは自分の体・行動をその家に潜むリスクに慣れさせてしまっているだけで、根本的な問題解決にはなっていないのです。

今回、私たちは、そのような家の中にあるリスクについて、日本福祉大学健康科学部福祉工学科建築バリアフリー専修の村井准教授、そして研究室に所属する学生のみなさんとともに、改めて調べてみました。建築バリアフリー専修は、「福祉社会に求められる役割を果たすため、福祉や環境の目で考える建築の専門家に」をテーマにしています。
今回は、安心して、いつまでも暮らせる「理想の家」をコンセプトに「My エデンの園〈創造〉計画プロジェクト」と題して、シリーズで家の中で気を付けないといけないこと、そしてその解決方法をご提案して参ります。

尚、住宅改修や福祉用具については、介護保険を利用したサービス、各行政で行っている独自のサービスもあります。詳しくご相談したい方は当社窓口または、地域包括支援センターやケアマネージャーの方にご相談ください。

 

画像提供:PIXTA

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