進化系病院広報塾ー広報が変われば病院が変わる。

① 新型コロナ禍で患者の減少が止まらない。

新型コロナで見えてきた課題。

春からの新型コロナウイルス感染症第1波・第2波を経験し、そして今、第3波の真っ只中にあります。
この間、さまざまな病院関係者の皆さまから聞こえてきたのは、患者減少に対する悲鳴です。第2波を過ぎて患者が戻ってくると期待されましたが、結局戻ってこないまま、第3波が来襲。
ウイルスの感染を心配する人々は、不要不急の手術を延期したり、慢性疾患の継続治療を一時中断したりして、病院から遠ざかってしまいました。

病院関係者のなかには、「結局、病院治療の必要な患者さんはこれだけしかいなかったのかもしれない」と、ため息を漏らす人もいるほどです。

確かに、これまで病院が提供してきた医療は過剰な部分もあったかしれません。
そこは見直していくべきでしょう。

いずれにしても、患者減少に苦しむ病院は、賞与カットや看護師の新規採用の中止など、経費削減に乗り出しているようです。
ただし、そうした経費削減策は、一つ手法を間違えれば、医療の質の低下を招きかねず、ますます患者離れが進む、という負のスパイラルに陥る危険性があります。
さらに、病院の活力が失われれば、地域のヘルスケアシステム(医療・介護の提供するネットワーク)全体のサイズも、小さくしぼんでしまうのではないでしょうか。

新型コロナが収まれば、患者は戻ってくるのか。

諦めムードのなかで、「いずれは患者も戻り、病院運営も元通りになるだろう」と楽観視する方もいらっしゃいます。

しかし、果たして本当に、病院は以前の活気を取り戻せるでしょうか。

私はそれには疑問を感じます。理由は三つあります。

一つは、コロナの流行が落ちついても、ワクチンの有効性が確定するまで時間がかかることもあり、コロナ感染に対する根強い不安が残ると考えられることです。
感染への不安が受診控えとなって、継続される可能性があります。

二つ目は、患者自身が「病院だけに頼らなくていい」「病院が提供する医療を全部受ける必要はない」ということに気づいたことがあげられます。
たとえば、生活習慣病のコントロールを薬に頼っていた人が、病院に通わない期間に、自ら努力して食事や運動に力を注いだ結果、健康を取り戻すなど、それぞれが主体的に健康に取り組む可能性が考えられます。

三つ目は、オンライン診療をはじめとした、新しい診療スタイルを手に入れる人が増えることです。

「定期的な健康チェックや継続の処方薬であれば、オンラインで十分」だという人は今後ますます増えていくと思われます。

こうしたことから、混雑した待合室で何時間も待ってほんの数分の診療で終わる>という病院の外来診療を避ける人が出てくるのではないか。あるいは、それまでかかっていた施設とは違う病院を選ぶ人も出てくるのではないか、と考えられます。

患者の意識変化とピラミッド型医療提供体制の転換。

待合室がどんなに混雑していても、名の知れたブランド病院をベストチョイスだと信じていた患者が、その選択を見直すようになれば、どんなことが起こるでしょうか。

もっとも大きな変化は、地域の医療提供体制の再編成だと考えます。

これまで地域には、大学などの高度急性期病院を頂点とするヒエラルキー構造が存在していたように思います。患者はもちろん医療関係者も少なからず急性期病院指向をもち、名前の通った高度急性期病院の方が優れた病院だと考える向きがありました。

しかし、先に述べたように患者の意識が変わり、患者が高度急性期病院や急性期病院の外来を避けるようになれば、医療提供体制のピラミッド構造は変わるかもしれません。
もちろん救急医療はこれまで通り、高度急性期病院・急性期病院に集中されますが、一般の外来や予定手術など、患者の意向が反映される領域では、転換する可能性があります。

たとえば、ブランド病院ではないが、良心的な診療で知られる中小病院、オンライン診療や予約診療のサービスが行き届いた地域の病院、病気療養中の急変に親身に対応してくれる病院などに患者が分散していくかもしれません。

その一方で、患者の減少した高度急性期病院や急性期病院も生き残りをかけて、急性期病棟を回復リハビリテーション病棟などに転換し、ケアミックス病院を指向することも考えられます。地域医療における病院の役割分担と連携体制は、今後、再編されていくかもしれないのです。

鍵を握るのは「地域の人とのコミュニケーション」。

地域医療提供体制の再編も予測されるなか、以前のように患者を取り戻し、病院の生き残りをめざすにはどうすればいいでしょうか。

私は、患者を含む地域住民とのコミュニケーションの活性化こそが有効な方策だと考えます。

地域住民との対話がふくらめば、徐々に信頼関係が育ち、「自分や家族の健康で不安があれば、真っ先に相談しよう」と考えるようになります。
地道な取り組みですが、対話の積み重ねこそが、病院経営の活路を拓く鍵を握っているのではないでしょうか。

発想を変えれば、このコロナ禍というピンチこそ、病院を発展させる最大のチャンスです。そういうポジティブな思考と行動力で対話に力を注ぐことで、必ずや病院運営の新しい道が見えてくると考えます。

ただし、コロナ禍のコミュニケーションはなかなか難しいところがあります。
これまでは診察室や病棟で、患者や家族とコミュニケーションを交わしていた施設も、面会制限などもあり、対面でのコミュニケーション機会は随分減ってきました。また、受診を控えている人とは顔を合わす機会さえありません。

そうした人々とのコミュニケーションの機会をいかに増やしていくか。患者や家族の不安感や質問にどのように答えていくか。
また、「病院では十分なコロナ感染予防を取っているので安心できること」「慢性疾患の継続治療や健診の中断が、病気の発見を遅らせる可能性があること」などをどのように伝えていくかが重要になると思います。

では、患者を含む地域住民へどんな情報を発信していけばいいのでしょう。次回のブログで考えていきたいと思います。

画像提供:PIXTA

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