進化系病院広報塾ー広報が変われば病院が変わる。

② 生活者との不断のコミュニケーションが未来を拓く。

前回は「新型コロナ禍で患者の減少が止まらない」と題して、病院運営を取り巻く課題についてお話ししました。
今回は、患者離れを食い止める上で鍵を握る「生活者とのコミュニケーション」について考えていきます。

コロナ禍の患者層を振り返る。

新型コロナウイルス感染症は、流行の第1波・第2波を経て、第3波に突入しました。この間、どのような患者が病院を利用したのかを振り返ってみたいと思います。

病院の種類や規模によりますが、患者層は大きく分けて三つに分類されると思います。

一つは、新型コロナの感染者。

二つ目は、緊急の治療を必要とする救急患者。

そして、三つ目は、慢性疾患の増悪に伴い、専門的な診断や治療が必要になった人たちです。この第三の患者層は、いわば「不要不急の受診」を控えるために、新型コロナの感染拡大が始まった春先からずっと、来院回数を減らしてきた人々だと思われます。

この三つのうち、第一、第二は、患者が病院を選ぶ余裕はありません。

したがって、病院広報の戦略的なターゲットにすべきなのは、第三の患者層、すなわち何らかの慢性疾患を抱え、専門的な治療を必要とする人たちだと考えます。

この人々の受診に対する不安感を払拭し、信頼を獲得することにより、病院は患者離れを食い止めることができるのではないでしょうか。

患者と病院の関係はリセットされる。そして…。

受診控えをしてきた患者の多くは、新型コロナが流行する以前は、地域のブランド病院を第一に選んでいたと推測されます。
ブランド病院とは、「有名」「評判がいい」「大規模である」「施設がきれい」「設立母体が信頼できる」などの条件を備えた病院です。病院選びも、いわば「寄らば大樹」という発想。

具体的な医療水準やサービスの質を比較検討するまでもなく、「名の通った○○病院なら大丈夫」という安心感が、地域の人々に深く根づいてきました。そうした意識のなかで、大学などの高度急性期病院を頂点とするヒエラルキー構造が生まれてきたのだと思います。

しかし、コロナ禍の受診控え期間を経て、患者と病院の関係は大きく変わる可能性が出てきました

いわゆる「1時間待ち5分診療」のブランド病院が、本当に自分にとっていい病院なのかどうか。
待合室の混雑を我慢してまで、通う価値があるのかどうか。

患者は病院との関係を見直しつつある、あるいは、この機会に見直す可能性が生まれてきたように思います

どんな病院が患者に選ばれるか。

 では、これから選ばれるのはどんな病院でしょう。

それは、常に待ちの姿勢で患者が訪れるのを待っている病院ではないように思います。

患者を待つのではなく、自ら患者のところに出向いていく、そして個々の懐に飛び込んでいくような小回りのきく病院ではないでしょうか。患者が在宅で過ごして期間も積極的にアクションを起こし、健康づくりをサポートするような病院こそ、患者にとって一番大事な病院、何かあったときに真っ先に相談したいと思う病院になれるのだと考えます。

そうした病院選びが一般化すれば、「普段は一番大事なA病院で診てもらい、必要な手術や治療を受ける。そして、A病院では対応できない治療が必要になったときだけ、設備の整ったB病院を利用する」といった病院の使い分けも当たり前になっていくかもしれません。

 では、どうすれば、患者にとって一番大事な存在になることができるでしょう。

その第一歩は、前回のブログでも述べた通り、対話の積み重ねだと思います。病院が伝えたい情報を単に発信する一方通行のコミュニケーションではなく、患者の声を受け止めながら対話を深めていく、双方向のコミュニケーションを育てていくことが重要なのではないでしょうか。

コミュニケーションの壁はどこにあるか。

 地域の人とのコミュニケーションを育む上で、現状の病院にはいくつか乗り越えなくてはならない壁があります。

 一つは、ICT(情報通信技術)の立ち遅れです。

今や、多くの病院で電子カルテが導入されています。しかし、患者の個人情報の漏えいを防ぐために、電子カルテは極めてクローズドなネットワーク(院内に限定された専用のネットワーク)の中で運用されてきました。そのため、外部の医療・介護関係者、地域住民などとのやりとりは、昔ながらの紙ベースでの情報共有(ファックス、手紙、広報誌など)が主流となっています。

 もう一つは、人的リソースの限界です。

病院スタッフの人件費は診療報酬の中から賄われるため、病院広報専属の人材を雇う余裕はありません。そのため、病院スタッフは普段の業務に加えて広報を担当することが一般的で、その日常は多忙を極めています。生活者とのコミュニケーションに多くの時間を費やすことは難しいのが現実的です。

 三つめは、コロナ禍のコミュニケーションの難しさです。

病院では、以前は院内で患者と直接話したり、必要な書類を渡したりしてコミュニケーションを深めてきました。患者が減り、感染予防のためになるべく接触を避けなければならない環境下で、そうしたダイレクトな手法が通用しなくなってきたのです。

 こうしたコミュニケーションの壁を乗り越えるための武器は何か。それこそが、スマートフォンを中心としたデジタルインフォメーションだと考えます。次回は、その新しいコミュニケーション手法の可能性について探っていきたいと思います。どうぞお楽しみに。

画像提供:PIXTA

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